α碁(alphago)とセドルの対戦

 すっかりインターネッツとしては、管理も甘く時系列を追えない状態ですが、それでも大体の流れから扱ってみます。
 そもそも囲碁は場合の数が異常に多いゲームで、「全幅検索(全ての手を最後まで読み切るということ)」はオセロですら無理なのであるから、当然囲碁ではそんなこともできない。
 場合の数が多いと広く読めば読むほど読みは浅くなるゆえに、いわゆる人間で言う感覚による「思考の枝切り(明らかに考えるまでもないパターンの削除)」ができないと数手先程度しか読まずに打つことになる。
 これが水平線効果と名付けられた状態をあっさりと生じさせてしまったり、稚拙な手を選ばせてしまうので、
、結果コンピュータ囲碁の発展はまだまだ難しいのではないかと思われていた。
 将棋の方は、もうすっかり調べてすらいないけど、普通のパソコン稼働のソフトでプロがなかなか勝てない段階には入っているようだ。これは関係者の努力のたまものと言えるが、ボナンザの発明による強化が将棋にはマッチしていたことに由来しているとも言える。
 どうも囲碁ではそう簡単ではないようだ。(全体的に同一局面からの変化、ということがそもそも珍しすぎるゆえに調査させる棋譜が圧倒的に少ないのが一つの理由だと思っている)
 囲碁も寄せの段階ではいわゆる詰め将棋並みに強いと言うのは分かっていて既に全体でもアマ何段という強さまだ進化をしたのだけれども、プロにはまだ遠く及ばないと言うのが一般的な認識であった。
 そこでα碁が、ヨーロッパのプロを負かせるという事態とトップ棋士イ・セドル氏との対戦が開かれると言うニュースが入る。
 プロの名のつく棋士がコンピュータに負けたと言うニュースも意外だったが、いきなりトップ棋士との対戦であることに盛り上がる。……とは言え、基本的には楽観であった。
 イ・セドル氏も5戦全勝する気でいるし、他のプロ棋士も余裕であると判断していたところに、始まった第一局。
 セドル氏の完敗だった。いや自分も実は第一局は見ていなかったのでこの雰囲気は分からない部分はあるけど、定石的に考えて滅茶苦茶な序盤から、その意味不明な手を中盤以降でつなげられて良手にされると言う、およそ信じられない展開がなされて、周辺の動揺が走り始める。
第二局。
 またしてもセドル氏の完敗だった。
 プロの解説の大まかな流れ

33: 2016/03/10(木) 17:33:04.42 id:u38dbwvQ0.net
>>19
今日の解説の流れ

解説「(アルファ碁の)この手は弱いです。」
解説「(アルファ碁は)強そうに見えない。とてもセドルさんに勝てるとは思えない。」
解説「(アルファ碁の)この手はなんの意味があるのだろう。」
解説「ちょっと地を数えてみましょうか。」
解説「黒(アルファ碁)は60ですね」
解説「白(セドル)は...45...あれ?」
解説「中央の白は生きていると思います。私では自信がありませんがセドルさんなら大丈夫でしょう。」
解説「白は大丈夫だと思います。」
解説「分からないですけど良いと思います。」
解説「(セドルは)良いと思いたい。」
解説「分からないですけど良いと思いたい。」
解説「局面は白が勝ってます。地を数えるとなぜか黒が勝っています。」
解説「分からないですけど良いと思いたい。」
解説「(アルファ碁の)これは酷い手ですよ。」
解説「あれっ...良いのかな。」
解説「やっぱり良かったです。(アルファ碁は)後半強いですね。」
解説「黒勝ちそう」
解説「白が良かったと思ったんですけどね。」
解説「どうしてこの打ち方でセドルさんに勝てるのかわからない。」
解説「この流れで負けるのは納得できない。」

 このあとこの解説の高尾九段は3局目4局目と解説をするのだけど、3局目でも同じような展開で、4局目開始時、満身創痍でalpha先生呼ばわりで、まともに解説できなかったですからね汗
 →3局目から既にα先生呼ばわりでした(訂正)
 セドル氏に対する信用も加えて、プロたちの常識的な展開を、あっさりと凌駕して勝っていった雰囲気が表れていると思います。


 3局が終わった時点で、「人類の敗北」「AIの管理社会」などのテーマが話題に上りました。
 そういえばα碁の説明をここで書いてみますが、AlphaGo、グーグルの子会社の構築したディープラーニングという自己学習機能を搭載した人工AIと称されるプログラムで、結構大規模なコンピュータで動いているものです。
 wikipediaに項目があるから詳細はそっちに任せて、モンテカルロ法を使った学習ですが、まあ、価値を植え付けた後、様々な乱数的なものを使って価値のあるものを抽出していくと言う反復をそれこそ際限なく繰り返すことによって正解を導いたり、この場合は思考を強くしていく手法です。
 囲碁には有効ではないかと前からいわれてたこともありますが、googleを背景にかなり大規模なものを、しかもかなり素晴らしいシステム構築で実行し、「囲碁に適用してやってみた」プログラムのようなのですが、プログラマー自身では既に強さが測ることのできないほど強くなっているということから、プロとの対戦を企画した感じになっているようです。
 そして、囲碁で成功すれば「AI」は信頼性をましていくわけですから、このシステムでできた評価プログラムで様々なものに適用しようという野心的な代物だったりします。
 次は「スタークラフト」という「有名な」ゲームに適用しようと言う話が流れています。
 その先は、医療分野での活躍、自動車の自動運転など多岐にわたる「人工知能」の基盤と目されるものなのですから、そういう話題になるのも当然のことと言えましょう。
 3局目まで、人間には到底かなわないだろうと思っていたAIが、プロをあざ笑うかのように、意味不明な序盤からいつの間にか優勢を構築して勝利していく。
 「モンテカルロ法の弱点として、大勝ちする場面には設定していないため、大有利な局面ではα碁は緩めていく気配がある」
 なんて話もまことしやかに流れ、実際、終盤に少しだけセドル氏が盛り返す場面も見受けられたのだけど、それすらも「終局の形を予測した余裕」とすら扱われる始末であった。 


 4局目が始まる、そして途中までの雰囲気ってのをもう一度味わいたいぐらい、解説を含めた全体の雰囲気のどんよりとした感じは、なんとも言えないものがありました。
 4局目途中、明らかにセドル氏の消費時間が多くなっていく。時間が少ないということは、無論しっかり読めないことを意味しており、中盤でそんな状態で、まあ勝てるわけがない、という当然の予測もある。
 戦況も30目は足りないという状況で、そもそも時間がなくなったらとやむなしとすら思ってしまう。
 その状況で長考をしてはなったセドル氏の78手目。これは既にα碁黒番の地であると思われた中央に白4子を頼りに放たれた強烈な飛び込みだった。
 そもそもそんなに広い隙間とも言えず、そんなところに飛び込んで殺されてしまうと地を強化、強い石は他の戦況も有利にする手助けになってしまうのが囲碁の特徴、その踏み込みに、実は多くのインターネット実況が存在した解説者たちもいろいろな声を上げる。
 わけがわからない、おやこれはいい手ですよ、凄い手だなあ、よく見つけたなあ、あれでもこうやると……へえ、というような解説者陣が不明からこれはいい手だと変わりもう少し深く考えたいと思う中、α碁が怪しげな手を打ち始める。
 えーこんな手でいいの?いやあコンピュータの考えることは分かりませんが……
 このようなセリフの肝は、下手なアマチュアの手が実は放たれているのだけど、3局までの不明な手からつながる恐怖を何度も味わった関係で、一目でダメだと分かるはずのプロが強く断言できないということなのである。
 その後、さらに致命的な、アマどころか素人もやらない手を放ち始める。
 徐々に解説のプロ棋士たちもを自信もち始める。
 「ここからなら私でも勝てる」
 完全なフラグたてじゃん!と戦況を判断できない素人たちとで盛り上がりながらもさすがに酷い展開で、α碁の黒全滅の様相で終局である。
 この時のそう快感もまた、もう一度味わいたい瞬間であった。
 とにかくすごかった。
 78手目は「神の一手」扱いなのだけれども、もう勝つことはできないと思っていた「コンピュータに人類の代表が勝った」瞬間の感動は筆舌しがたいものがあった。
 まあ2ちゃんねらーですし、自分も過去の記事にも韓国に関する苦情はたくさん書いていることも踏まえ、韓国、韓国人に対する賞賛は諸事情を思い出すとなかなかしづらいこともありましたが、全部吹っ飛んで、何人なんて関係ない、門地など関係なく絶賛ができたと言うのも2chでは非常に珍しい事例と言える騒ぎだった。
 テレビで速報が流れた、NHKのニュースでトップで扱われた、何もかもが面白かった。
 セドル氏のコメントも控えめで好感が持てたことも付記しておくけど、とにかくわくわくした。
 英雄だった。で、誰もが祝福した。


 5局に関してはまた書くかもしれないけどひとまずここまでで。