上杉考

くしくも大河ドラマで扱われているゆえ、兼続の読み物は多い昨今ですが、文藝春秋6月号と歴史群像6月号との比較はおもしろすぎる。


文藝春秋のほうは大河ドラマの原作者の兼続へのおもいってな話で、現在の世相を批判しつつ、兼続の愛に傾倒した内容、面白いかと言われれば疑問のある内容。
たしかに経済政策を考える意味で、最終的に名君と言われた人だけに、概要は美しいの一言だが、その概要だけで現在を批判するのは短絡過ぎるだろう。
さらりと流して書いているが、給料3分の1は尋常じゃない。
それだけの強権発動できてなしえたことで、今の話に当てはめたら、まず間違いなく「独裁だ」のなんだの印象批判から始まり頓挫することは明白、結果だけ見て手段を肯定しないのでは話にならない。
無論それを踏まえてなお、うまい政策を施しているのだと言えるのだけど。


最初にも書いたとおり、作者の兼続への思いの丈、と考えるべきで、突っ込みをいれること自体野暮なのだろう。


他方歴史群像は、上杉ファンをやめたくなる内容ながら、兼続の政策の根拠に言及する内容で非常に興味深い。
兼続に対しても、ときどき誉めさえする人が出る家康への書状などは、語るべくもない外交音痴扱い、最上との采配ぶりまでは、無能一歩手前とまで書いている。


そのまえの上杉軍の記述からして辛口だった。
しかしそれだけにきちんと考察されており、一ファンが語る浅薄な内容とは一線を画していておもしろい。

歴史群像は今号には、ガザの話も、いわゆる人道的な報道とは距離をおいた冷静な内容でこれまた面白い。
他方旧日本軍の戦略の記述は、情けなさ満載で、戦争批判の前に、どんな問題点があるのか、機能していない恐ろしさを感じた。
てかな恥ずかしくてこんなもん読めるかレベルなをだな。


おっと文藝春秋は満遍なく記事があって面白いです。
無論玉石混交、今の自分には価値のない話も、後に注目するかもしれないポテンシャルがありますね。