かぐや姫の物語を見た。

 ネタバレのないところでまず、お勧めかどうかを考えると「風立ちぬ」よりも一般にはお勧めの話だと思います。
 分かりやすいし、竹取物語を再現し笑いどころがありそして泣ける。
 実は既に見た者からの感想を一言「長い」と聞いて確かに2時間半、やばいかなと懸念したのですが、そんなことは杞憂でした。


 この映画を観る前に聞いた評判を思い出して書いてみましょう。
 まず、宮崎駿氏がこの映画を見て、まわりが泣いているのに不思議そうな態度を取ったと言う話ですが…、自分は不思議まではいかないけどどちらかといえば宮崎駿氏の感想に近いかもしれないと思いました。というか自分が「自分自身で面白い」と思った作品としては「風立ちぬ」の方が上なんだよね。
 これは俺の映像作品の楽しみ方に由来すると思いますので一般的な感想とは違うと思っています。
 製作費50億…、専門的なことは分からないですが、こういう絵を動かすのは難しいのだとか。
 正直、映像実験的な作品を見てスゲーとか後世に残るとかそういうことにはあまり興味がないのであれですが、少なくとも違和感はなかったです。単純に合っていました。
 地井武男氏の声、すぐ気づいてしまった。単なる声としてなら普通でしたが故人というのに釣られた感じで集中をそいだ気がするのが悲しい。
 授乳シーンや子どもの裸で海外ではそのまま放映できない…
 授乳シーンこれでだめか。アラビア方面での上映を考えるとって言ってるけど、あっちでの放映はそもそもシナリオ的に無理じゃねと思った。


 バレのないところで感想を書くと、
 まず、かぐや姫の声は良かった。結構大変そうだったけど凄く好感が持てた。
 そしてかわいかった。
 翁…ややステレオタイプだったな…
 媼。かぐや姫の支えでもある、物語的には非常に便利なキャラに思えた。
 幼少期の扱いをどうするかというのが一つのテーマだったそうで(パンフレット)、なるほど、たしかに力が入っていたと思う。そして綺麗に一つにまとまっていたかなと。
 いずれにしても減点法とか考える必要なく、扱いたいテーマをしっかりと描写した感じで泣ける話で例によってタネが明かされる部分はもしかしたら読みとれない場合もあるかもしれないが、そんなテーマなど別にどうでもいいやって思うぐらい非常に印象よくまとめられていると思いました。
 てか事前に思った以上にかぐや姫だったですね。


 さて内容に触るネタバレの感想を。














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 まず、翁だな。
 なぜ連れ帰った?
 と思った。いやまあ、そうしないと話始まらないんだけどさ。拝む、まではわかる、そこで赤子状態ではないのに連れて帰るの選択肢がやや難易度が高かった。
 その後あらゆることが、かぐや姫のためにやってやろうということはよくわかったが、常識と姫の心との相違ってのは現代にも通じるネタとも言えるし、もはや親が婚約相手を世話をする時代でもないので日本ではやや古い考えでもあるとも思う。でも、親の立場として考えて、ってのはあるなぁ。


 子どもたちとの成長は非常に面白かった。あのウリは…てっきり何かのフラグだと思ったら単純にどこかの農家の農作物でしかなかったのかと。
 神からの施し。
 あれはどういう意図があったのか、と考えずにはいられない。
 金子(きんす)なんてのは富の象徴ではあるが、当時を考えれば作中の扱い通り農家のじじいが日用品の買い物に使えるような代物ではない。翁はその点をよく理解していて神の思し召しを都へ行けと解釈したのは、うなづけた。




 都へ。ロッテンマイヤー相模、いいですね。
 そしてキャラ的にあざとい女童、いや良いキャラです。面白い。面白いけどあざとい。てか下手すると全部持ってってないですか?


 斎部秋田…かぐや姫を名づける役の人だが…作中もっともいい目に遭ってね?
 後に考えてもうらやましすぎてヤヴァイレベル。
 かぐや姫と名付けられた宴。…その後のあれは、サスケーサスケー!!BGM無視して頭の中で一人のサスケが二人のサスケになっていった(謎)


 贈り物5人衆。一人目の蓬莱の玉の枝はなんというか、当時の社会においてコミュショウでは生きていけないことがよくわかった感。
 その話、橋爪功ということもあるが、吸い込まれるような語り方、話の持って行き方などは、きっとこのような時代には必須の能力だったのだろうと考えてしまった。
 次に火鼠の皮衣の話も進み始め、おいおいこれあと3人もやるのかよといやな予感がしたけどそこはちゃんと考えてあった。
 ゆえに大伴大納言もだが、特に石上中納言はかわいそうだった。
 他方、石作皇子の寝技ワラタ。精神攻撃は基本、精神攻撃は基本…


 帝の話からラストへ。
 上手いと思いました。
 てか進撃する楽団、いわゆるラスボスのラリホーマが強力すぎてなー
 ひょいっと印を結んで眠らせる、空中に浮かせる、引っ張る。
 レベルが違う…とかあほなこと考えてしまった。


 と以上まずは流れの印象。
 骨格であるかぐや姫とその考えの関係は、一転して考えるところありだなぁ。
 これはこの作品に限った感想ではない。竹取物語の構造への悲しさを考えてしまっているのかもしれない。
 まず、親から考えればあんなごろつき捨丸とか選択外だよなぁ…。
 選択肢があるものの悩みというのはそれこそ他者から見れば羨望なコースを選ばないのは歯がゆかったと考えてしまう。
 もちろん、かぐや姫のあこがれも分かるのだけれど…
 実はこのラストの悲しさの種類関連に関して、「風立ちぬ」とはちがう位置していると思ったんだよね。
 「風立ちぬ」はラストがああで、ヒロイン関連はなんとかならなかったのかと思う人もいるのだろうけど、自分はどうにもならなかったと考えており、でも「未来へつなぐ」希望の作品だと思った。
 だが、かぐや姫の選択肢はどれも闇にしか見えなかった。
 どこに嫁いでもかぐや姫の考えからはベターエンド以下。捨丸が物語上ベストエンドだが、その後の人生考えてしまうと他人事ながらそうは思えないという…。
 この物語の終わり方はどうだろう。
 翁、媼、そしてかぐや姫の視点でもどれもバッドバッドベター程度。
 先を考えるとホント悲しくなるのですよ。
 もちろん、そもそも関わらなければよかった、なんてことは絶対にない。皆にそれまでではあり得なかった様々な幸せを呼びこんできていたさ。


 でも何より媼に過酷なエンディングであることに目が行ってしまうと泣けすぎて困る。


 「姫の犯した罪と罰」、がテーマとは言えど、それはうまく扱っていたなとは思ったが、結局竹取物語は悲しい話だったという結論に至ってしまったのが何とも言えない感じ。


 とこんな感じですが、いい作品であることは間違いないです。


 あ、そうそう自分の映画の鑑賞の仕方ですが、結構メインキャラをスルーして背景とか眺めてること多いんですよ。何を書き込んでいるのかを探してみてしまうのね。
 そういう見方的に、この作品だと籠を結うシーンとか、何かを織るシーンなんかのマシンの動きなんかを見てしまうのです。
 昔ステージ上の司会者がではこちらをご覧ください、とか手を差し出した方向に見るべき人、読むべき文章などが掲げられていたりしたのですが、それを無視してずっと司会者を見ていたらその司会者ににらまれたことがあったりしたので多分そういう変なところはあるのでしょうねと…。
 でその視点で見ると、この作品は周囲に注目する物・人が必然的に少ないのでもてあましちゃうんです。その点「風立ちぬ」は良かったと。