ちょっと前の話になりますが、14日15日にかけて繰り広げられた深浦康市王位vs羽生善治名人の実況映像は非常に楽しめました。
と同時に将棋の難しさを十二分に味わいました。

深浦王位の一手損角換わりからのお互いが腰掛け銀をしたこの戦い。写真は37手目羽生名人が仕掛けたシーン。
角換わりの定跡といえば「木村定跡」が有名で、その結果から玉が8八や2二に入らず戦いが始まるのがセオリーとなっていますが、この局面は「木村定跡」とは似て非なる局面。
ま、「24で5級」の自分にはこの程度の説明しかできない。
ちなみに自分は角換わりにしたら先手だろうが後手だろうが、相手が右玉だろうが、棒銀で銀香交換をして殺到する。



さて、この将棋に戻ると、やはりこの45手目▲6六角打ちだろう。
直接的には浮いている銀に当てた手だけど受けるのは容易、その後のことを考えればこの角を如何に捌くかがカギとなってくる。
深浦王位の誘導により、この角は桂香との二枚替え、香が9三になり込んだ形へと変化してゆく。下の図。



途中からこの局面まで羽生名人はそれほど考慮時間を使っていない。
つまり、深浦王位の誘導でこの二枚替えまで持ってきたけど羽生の予想の範囲内→羽生は戦える、と踏んでいるわけだけれども・・・
素人なる自分では全く訳がわからない。


まず、将棋の勝負は序盤中盤終盤に大きく分けられる。
序盤は駒組み、中盤は駒が当たり始めたところ、終盤は詰むや詰まざるやを考えるところ。
今回のように大駒を捨てる場面は、自分では終盤、あるいは中盤から終盤へ入る間際程度でならばあり得る手だと思っている。
しかし、羽生名人の角を失った場面は、まだ中盤の真ん中ぐらいにしか見えない。
もちろん強烈な駒得をしているとか、著しく形を崩した、というならばわかるのだけれど、二枚替えとはいえ得したとは言い難い、深浦王位の盤面は金がそっぽに向かったが、飛車は絶好の場所に効いている。
敢えて言えば羽生名人の布陣が角打ちに強い場面であるとも言えるが、二枚の手持ちの角を駆使するならばいくらでも隙を作ることが出来る、あるいは隙が出来た瞬間に猛烈な反撃が待っているのはあきらかである。
もちろん羽生名人は、他のプロ棋士が天才という人物なので、既にとんでもない筋が見えていて、それ故の決断、とも考えられたのだけれども、何も大事件は起きずこの後もいわゆる中盤が続くのである。
明確に終盤に入ったと思うのは78手目辺りからの、「深浦王位の猛攻」からである。


まず先の交換で損をしたのは前述したように羽生だと思っている。
ならばその羽生側が、奪われたポイントの分取り返す手筋があるはずなのだが、仕掛けたのは深浦が先なのである。
攻めを急がされるべきは羽生のはずなのに、先攻が深浦王位・・・
まったくもって訳がわかりません。


途中の変化で羽生名人が大きなポイントを取っていたのだろうか?
▲4四香車から相手の守り駒を派がしたのは大きいし、飛車に当てた▲5一銀は大きな効かしだと思う。
実際には、▽5五桂を打たれて6三の辺りに大きな圧力がかけられ、駒を一枚でも余分に与えると殺到されてあっさり土俵を割りそうな局面ができあがっていて、決して安全な展開ではなかくむしろ危ないといえる形でだと思う。
5一の銀にしてもコレを足がかりにして攻めたいが、4三の金が効いていて攻めたら二枚替え駒損の攻めが確定する場面にしか見えない。


詳しい展開は
http://www5.hokkaido-np.co.jp/49oui/
を参考にして欲しいが、最終的には深浦王位が攻めきれず負けている・・・
結局羽生名人はどこまで読んで角を捨てたのか・・・すごく興味があります。


とはいえ、既に終わった後の展開をみているとまるで必然な展開に多くが見えますが、リアルタイムで二人のプロ棋士が30分40分と考え、2chのスレにて虚々実々の「次はこうだ!」「これは悪いだろ」・・・などなどの記述をみているときには、全然違う展開を予想していました。
ともかく、じっくりと考えてみることができたのは楽しかったです。