中原誠十六世名人引退

 すっかり時機を逸してしまいましたが、会見を見るにしっかりしているご様子。
 2chで調べた結果なので、アレなのですが、「棋力が落ちたわけではなさそう」で「まだ麻痺があるので長時間指すこと出来ない」あたりが引退を決めた身体的理由のよう。
 最後の木村八段戦や、その直前の羽生佐藤森内撃破など、まだまだ第一線で活躍なさるもんだと思っていた矢先でしたので本当に残念です。
 中原名人の将棋を見ることが出来なくなることはかなしいですね。


 自分の知っている強い棋士、大山十五世名人、谷川十七世名人、羽生十九世名人(現在は四冠)の比較を素人目で考えてみますが、まず大山先生から。


 大山先生は藤井九段の説明などを読んで、あらためて「定跡を作らせない強さの人」だったのではないかと思いました。
 これは、自分が将棋クラブ24なんかでめちゃくちゃ強い人にやられることがあるのですが、定跡的に圧倒的に不利という手を指して、一時的に危険な状態に引き込み、でもそのあと地力で勝っていくような指し方。
 駒落ちの緩い奴をいつもやっているというのでしょうか、多少の不利なんか終盤で挽回できる、その意味でずっとぬきんでた強さがあったんじゃないかと思っています。
 谷川先生は「美学を追究できる強さの人」かなぁ。
 安全な手・損の無い手ではなく直線的に最短距離を進む「高速の寄せ」、当代随一のプロ相手に華麗に決めていったその指し手は、他の棋士ならひるむところ、損の無い手で妥協するところを斬り合うのはプロ中のプロしかできない指し方でした。
 自分もこういう斬り合いが大好きです。将棋の醍醐味ですよね。もうほとんど詰めろかもしれない、でもこちらも詰めろをかける手で追いかける、詰むや詰まざるや!
 羽生先生は「最強の名を冠した強さの人」でどうでしょう。
 終盤での羽生マジック然り、序盤での工夫の功績の多さ然り、中盤の変幻自在の手は特にすごい。
 時に丸山劇辛流、時に谷川光速流、時に森内鉄板流、そして佐藤変態流(何とかならんのかと思うけどどうもこの呼び方でしょう、緻密流は大昔のイメージだし)・・・、あらゆるプロ棋士のいいとこ取りをしたようなその指し手は現在でも最強と呼ばれるにふさわしいと思っています。


 そして中原先生です。
 「自然流」が普段呼ばれる言い方ですが、中村修不思議流とダブるのですが、中原不思議流が自分のイメージ。
 なんかいい言葉が思いつけば、と思いますが、現在一番しっくり来るのは「不思議」なのです。
 理由は、とにかく中原先生は昔から強いのですが、定跡形からでも突拍子もない仕掛けや受けをしていることもさながら、中原先生独特の感覚でしか指せない中原流の将棋がもう、とにかくよくわからない。
 他の人が指さないこともあるけど、なんか、定跡化された将棋と将棋の合間をするりと指して行く感じのその将棋はあまりにも独特でとにかく人がやらない、真似しない強さを持っている感じがしました。


 この人にしか指せない将棋はまだまだたくさんあるんだろうな、と思うと本当に残念でなりません。
 どこかイベントででも上位の人と指した棋譜なんかを紹介して欲しいぐらいですね。